nonaブログ

柿渋塗料

家づくり、家の考え方、建築材料、歴史文化、環境、畑、築50年のリノベーション

【柿渋塗料】

聞いたことはある、という方が多いと思います。

古くは平安時代から作られ使われていた、日本古来の塗料です。

渋柿をつぶして、圧搾し、出てきた液を数年間発酵熟成させたもの。

柿渋は染料として衣類を染めたり、防水効果があるために番傘に塗布したりします。

もちろん建築材料にも。

防虫・防腐・防水効果があると昔から大切に作られてきた、柿渋。

ポリフェノールが沢山含まれているので、飲まれる方もいらっしゃいます。

また、石鹸にも使われているようで、

まさに衣食住に使われてきた素材。

近年では、建築材料としてホルムアルデヒドを吸着する効果もあると言われています。

ちなみに、土壁も同じくホルムアルデヒドを吸着する効果があるので、発酵して作られたものは、同じ効果が得られるのかもしれません。

そして、先日驚きのニュースが飛び込んできました。

奈良県立医大 にて、柿から抽出した柿タンニン(柿渋)に唾液中の新型コロナウイルスの感染力を失わせる効果があることを実験で確認した、

と発表されたのです !

現代、柿渋の需要が少なくなってきている昨今、追い風が来てる!と

柿渋を生産されている方は喜んでおります^^

柿渋というと、匂いがきつく、色は濃い褐色で重苦しい印象がある方もいらっしゃると思います。

今回リノベーションの現場で、

岐阜県山形市の伊自良大実(いじらおおみ)という渋柿から作った柿渋を使いました。

これはサンプル。

一度塗ですが、とても透明感があります!

ちなみに上の木材は1か月半前に塗ったもの。

この透明感にもびっくりだったのですが、さらに驚きなのがこの香り。

とてもフルーティで、発酵させた状態とは思えない良い香りでした。

※大工さんの中に苦手な方もいらっしゃいましたw

この伊自良柿渋を杉床板に塗布します。

床板を張る前に塗布。

まず、この透明感とこの香り!

3年寝かした柿渋です。

伊自良柿渋を生産販売されている、<柿BUSHI>のみきさんも助っ人で来てくださいました^^

柿渋の、生産管理から工程販売まで、今の問題点なども含めいろいろお話聞かせてもらいました。

余談で。

コロナ菌に効果がある研究結果が出たというニュースが流れてから、問い合わせがかなり増えているそうですw

塗ってみました。

右から、下半分は素地。上半分が1回塗。その左隣が2回塗。

その左(左から二枚目)が1回塗。

一番左は裏側。

こちら3回塗。

杉材ですと、2回塗まではそう気にしなくてもムラなく塗れますが、

3回塗となると、塗り重ねることで粘りが出てくるため、気にしないとムラになりやすいです。

刷毛のあとや、塗り重ね損じている箇所などが、ある程度乾いてからぐっと出てきますので、

その場合は4回塗(笑)

柿渋は、塗ってからどんどん色が濃くなっていきます。

また、無垢材に塗る場合は、そもそも均一にはなりません。

ですので、生活しているうちに馴染んでいく良さがあり、

だからこそ、自分たちで家をメンテナンスする材料としては適しているのです。

6帖間で18枚の板を3回塗り。

3.5ℓ程度使用しました。

終始柔らかい香りに包まれ、帰宅後身体を洗ってしまえばその香りもなくなり、

発酵したものの気になる臭いは全く感じませんでした。

これなら、施主さんがメンテナンスとして塗り重ねる際に、苦なく使用できる塗料だと実感しました。

また、環境のことを考えると、

自然の恵みをダイレクトに生かしているので、

生産過程のエネルギー必要量は、他の塗料と比較してとても少なく済みます。

柿畑の面積が少なくなっていることと、その管理がとても問題だとおっしゃっていたみきさん。

消費者の需要が高まれば、そこでの働き手も増え、住まい手も増え、

山林で働く人も増え、森林の管理が出来るようになり、

土砂災害の危険性が低くなります。

消費者の需要が、山の循環への太いパイプとなります。

塗料一つの選択。

されど、そこには大きな環境問題と解決される道筋があるのです。

そんな大きな視点を持ちながら、

どれを選択すると

ご家族にとってサスティナブルな快適をつくる暮らし

になるか。

考えていきたいですね。