nonaブログ

木の家ネット京都総会

建築材料、建築見学、歴史文化

先日、所属する「木の家ネット」の年に一度の総会があり、京都まで行ってきました。

100名近くの会員さんが集まり賑やかに過ごしました。

一日目はセミナーハウスで情報交換の場として過ごし、二日目は数か所に分かれて見学会。

私は、京名栗の原田銘木店さんを見学させてもらいました。

原田銘木店さんには、3代目の代表原田 隆晴さんと共に、2代目のお父さんと4代目の息子さんで運営されています。

圧巻の技術力によるとても美しい名栗加工を拝見しました。

栗材のほかに、杉やトチ材等様々な木材を取り扱っています。

私が特に気になったのは、職人さんの日常。

京都京北の里山の中で周囲に住宅も少ない静かな場所に作業場があり、

天井も高く常にシンと静まり返っている中で

天井も高く広い作業場

一つの材料と向き合い無心になって手斧ではつる。

腰も痛くなるだろうし手も痛いだろう。

代表の原田さんにそんなことを話しかけましたら、

腰が痛くなり引退された職人さんも少なくない、とのことでした。

原田さんは手の皮が5回めくれるぐらいにようやく技術が習得できるようになったそうです。

10年はかかる、とおっしゃっていました。

常に手斧と木材に向き合う時間は、時に息が詰まってしまいそう・・

4代目の息子さんにお話しを聞きましたら、

息が詰まることはないけれど集中できる時間がまだまだ短いのと、体力がまだ足りないため、半日向き合ったら半日は山の仕事(林業)をする、と話されていました。

そりゃそうだ。本当に大変なお仕事です。

しかし見てください。

京名栗の圧巻の美しさ。

手加工ならではの美しい名栗
一番薄い板で10㎜まで斫れるそうです。
トチの木は目が優しい。LEDの照明に当たると木目が浮き上がるらしく最近人気なんだそう。
この大きな丸太の名栗加工は一日で出来てしまうとのこと。大変な集中力と技術力。
上から床柱・手すり・天井竿
格子塀。名栗加工の竪格子が優しく境を作る。
杉板で実演。都度、様々なサイズ形状の手斧を駆使して加工します。
日本に一本か二本しかない大きな手斧。

実演も沢山みせていただきました。

動画が簡単にブログに載せられず残念。

原田銘木店さんのホームページに動画がありました!

身体がぶれず、サクサクと斫っていらっしゃいました。

見学者も体験させてもらえることになり、大工さんらが早速手を挙げて体験されていました。

難しいと言いながら、それでもまっすぐ斫れていて、割と出来るもんなんだな、と。

そして設計者も体験。

ところが。。

大工さんと違い、斫りすぎてしまって次に進めなかったり、手斧がまっすぐ入らなかったり。

さすが大工さん。体幹がしっかりしていて安定していることがよく分かりました。

私はというと

見てると怖いと大工さんに言われながら(笑)、材料の上を手斧がかすってしまったり、斫りすぎてしまったり・・

不器用さが存分に表れておりましたトホホ

作業場の外には、粗くなぐってある稲木が沢山立てかけられていました。

原田さんに伺ったところ、

名栗の加工の始まりは、大昔の稲作のときに稲を干す稲木に加工を施し豊作の感謝を表すものと伝わっているそうです。

この地域の稲木(いなぎ)のサイズ。長い!

建物の装飾として扱われ出したのは、千利休がお茶室の床柱に使ったことが始まりと言われています。

実は我が家の床の間の床框は名栗加工されています。

とてもやわらかい風合いになり、和洋共に合う意匠です。

職人さんがどんどん減る中、ここ数年は注目され需要が伸びているとのこと。

良い傾向ですね。

私たちは、まだまだ知らない日本の伝統技術が多くあります。

日本の豊かな技法を、現代の住まいに採用し文化技術を残していくことは、

グローバル社会の今、世界から見る日本の有り様としても重要なことだよな、とふつふつと考えながら原田銘木店さんの作業場を後にしたのでした。