随分前ですが、住宅の一部改修工事を承り、壁の仕上を和紙クロスで提案したことがあります。
和紙クロスは、襖紙と同じぐらいの厚みのある和紙です。
和紙ですので、自然素材の性能はもちろん、見た目がとにかくやわらかく室内を包み込んでくれている風合いになります。
和紙クロスの原料は、ケナフ・楮・ミツマタ・雁皮・竹・桧・木材パルプ等です。
自然素材で手漉き和紙とほぼ同じ工程で作られるものなので、和紙の性能を持つことが出来る壁紙です。
調湿効果が高いため、紙が伸びたり縮んだりすることを想定し重ねて貼っていきます。
二枚目の画像で、竪のラインが二本ある様子が分かりますでしょうか。
この重ねた風合いもまた厚みを感じて良いものです。
この部屋は、応接室です。
昭和30年ごろに建てられた家で、ずっと応接室として使われてきました。
当時、新建材と呼ばれる合板に木目のプリントしたシートを貼ったもの等が流行り、とにかくプリントだらけの仕上でした。
扉も、壁も天井も、そういった石油製品で造られたものでした。
これらをはがすと、
土壁が見えてきました。
調湿・蓄熱・吸音、といった効果の高いものです。
その時代の流行りや予算によって、こういった効果が発揮されぬまま半世紀以上壁の中に存在していました。
今回も壁下地として石膏ボードを貼ることになったので、土壁の効果は得られぬままですが、
仕上の和紙クロスで、調湿・蓄熱・吸音効果を得られるようにしました。
今年の冬も、暖かくて柔らかくて心地良い空間として、住まい手に快適さを提供できていると思います。